右利きライトハンダー

思考のメモ帳

男でも女でもない

物心ついたときから、意識したわけでもなく男の子が好きそうなものにしか興味を示さなかった。 怪獣とポケモンが好きで大体持ち物はそれだった。一個上の姉は対照的で、お姫様みたいな衣装を好んだ。

年子なので姉からよくお下がりをもらうのだが、正直嫌だった。女の子らしいフリフリのスカートやキティちゃんのトートバッグじゃなくてポケモンのリュックがほしかった。高そうな少女のお人形をもらったときは、ついボールペンでひげを描いてしまった。

それでも、周りが男の子と同じように接してくれたので過ごしやすかった。石集めが好きだったのでおじゃる丸の「かずまくん」と呼ばれていたし、男の子と一緒に穴掘りしたり虫捕まえたりしていても、誰も気にしなかった。私も「男の子とおなじものがいつか生えてくるんだ!そしていつか王子様になって誰かを守るんだ!」と無邪気に信じていた。

性別を意識したのは小学2年生だった。1年生のときに男の子とやんちゃをしすぎたせいで、友達の男の子全員と引き離されてしまった。クラスが2つしかない学校だったので、2年生が始まったときにクラスに友達がいない人なんて私ぐらいで、完全に孤立してしまった。しばらくして一人の女子が嫌がらせをしてくるようになった。

この嫌がらせが私にとっての「女子」の第一印象だった。保育園や近所では女の子とちゃんと接していたらしいのだがまだ友達意識というものがなかったので、小学2年生のときには完全に記憶から消えていた。陰湿で不気味な生物だと思った。

嫌がらせは長く続くことはなかったものの相変わらず周囲から孤立していたので、優しい女の子が声をかけてくれるようになった。こうして女子の会話に初進出を果たしたのだが、会話内容を聞いて衝撃が走る。ミニモニ?きらりんレボリューション?え、ルギア知らない?まじか。まじか…。

負けず嫌いの私はすぐさま母にお願いして「ちゃお」を買ってもらった。またも衝撃。目がキラキラしとる。イラストも絵もみんな同じやん。あ、でもこの光るボールペンはいいな。

女の子の理解はあきらめたけれど、付録が気に入ったのでしばらく買うことにした。ヒロインのイラストが描かれたプラスチックケースは、シリカゲルを水に浸す容器にぴったりだった。漫画はパラパラ見る程度だったが、基本ワードはおさえられたので、女の子の会話のリスニングができるようになった。

しかし、歳を重ねるにつれて「男女」の隔たりが大きくなる。男友達も次第に少なくなっていった。レゴもポケモンドラクエスマブラも好きだ。残念ながら、思春期の女の子の間ではこれらの話題はタブーである。集団の過半数が知らない話題は避けられるのだ。自分から提供できる話題はなく、女の子で友達と呼べるような人は最後までできなかった。

中学生になって本格的ないじめを2年間受け続け、女性不信になった。いよいよ女性の心が理解できなくなった。

そして高校生。女性や人を少しでも理解したくて、アドラーニーチェを読んだ。いじめや暴力の裏にも、その人なりの正義が存在することを知った。人の気持ちをきちんと理解できることはなかったけれど、他人の行動に寛容になった。このあたりから友達に変人呼ばわりされた。そうなの?

高校→大学と、男子生徒が多い環境で過ごすことがおおかったので、再び男の子の話し相手がつくれるようになった。やったぜ!!

そうはいっても小さい頃より心身ともに大人に近づいてくる年齢だ。2人っきりになると話題が怪しい方向に進む。自分が女性としてみられていることに気づいた。

「女性らしくした方がいいのかな?」

そこで、必要に応じて身体の性に合わせた言動をとるようにした。化粧する。スキンケアをする。協調性を持つ。そうしたら、心も女性になっていくと思ったから。

結論をいうと、24歳になった今でも心は女性になりきれていない。かといって男性にもなりきれていない。どちらかに一方になるのは私には無理だった。

代わりに今は自分らしさを探している。性別にとらわれず好きに生きられるように。

半端者の私は、自分らしさを探して今日も行く。